取り調べ時の警官備忘録「裁判証拠」
最高裁も開示命令
捜査段階の自白が被告の意思によるものかどうかの「任意性」が争点となった刑事裁判に関連する特別抗告審の決定で、最高裁第三小法廷(堀籠幸男裁判長)は、検察側に対し、取り調べの際に警察官が書き留めたはずの「備忘録」を証拠として開示するよう命じる判断を示した。決定は25日付。最高裁が、警察官の備忘録を「公文書」とみて刑事訴訟法に基づく証拠開示命令の対象としたのは初めて。
東京高裁が11月に開示命令を出したことで、最高裁の判断が注目されていた。09年春からの裁判員制度の実施にあたって、取り調べ過程をより透明化する「可視化」が求められる中、今回の判断は画期的といえ、捜査や裁判の現場に影響を与えそうだ。
自白したとされたのは、偽造通貨行使の罪に問われた男性被告(59)。警視庁と東京地検の取り調べで犯行を認める供述調書に署名したが、東京地裁での初公判では「偽札と知らなかった」と犯意を否認した。
このため弁護側は、初公判後に非公開で争点を絞る「期日間整理手続き」の中で、男性を取り調べた警部補のメモがあれば、自白が任意でなかったことを裏付ける証拠になる可能性があるとみて証拠開示命令を出すよう地裁に求めた。
検察側は、開示の対象になるのは検察官が実際に保管している「手持ち証拠」に限られ、メモや備忘録は対象にならないと主張してきた。地裁は検察側の主張に沿って請求を棄却。しかし、即時抗告審で東京高裁が開示命令を出したため、検察側が特別抗告していた。
決定で第三小法廷は、05年11月に始まった公判前整理手続き(期日間整理手続きを含む)での証拠開示制度が、争点整理と証拠調べを有効で効率的に行うために導入されたことを重視。開示の対象となるのは検察官がいま保管している証拠だけでなく、「捜査の過程で作成・入手した書面で公務員が職務上保管し、検察官が容易に入手できるものを含む」とする初めての判断を示した。
さらに、警察官が捜査にあたって守るべきことなどを示した「犯罪捜査規範」(国家公安委員会規則)に「警察官は公判で証人として出頭する場合を考慮し、捜査の経過など参考となる事項を明細に記録しておかなければならない」との規定があることを指摘。この規定に基づいて作成・保管された備忘録があれば、「個人的メモの域を超えて捜査関係の公文書にあたり、証拠開示の対象になり得る」と結論づけ、検察側の特別抗告を棄却した。
2007年12月27日06時50分:asahi.com>社会>裁判> 記事

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