薬害C型肝炎訴訟:原告側が和解案提出へ
大阪高裁で調整
血液製剤の投与でC型肝炎ウイルスに感染したとして、患者が国と製薬会社に損害賠償を求めた「薬害C型肝炎訴訟」で、原告側は15日にも、大阪高裁に和解希望案を提出する。一連の訴訟で、当事者から和解案が示されるのは初めて。また原告側は与党のプロジェクトチームとも初めて面談を行い、「国が肝炎対策の誤りを認めて謝罪し、一日も早く訴訟を解決してほしい」と訴えた。和解に消極的な国との溝は依然として深いままだが、裁判所の調整で双方がどの程度歩み寄るのか注目される。
大阪高裁で係争中の大阪訴訟を巡っては、横田勝年裁判長が先月14日、「少しでも可能性があれば和解勧告をする」として、全国で初めて、公式に和解で早期解決を目指す意向を表明した。今回の和解案提出は、こうした高裁の意向に応じるもので、原告弁護団は「提訴から約5年が経過し、全国で5人の原告が死亡するなど、待ったなしの状況」と、和解による早期解決を求めている。
一方、被告の国と製薬会社側は今のところ、和解案の提出について「検討中」としている。ただし、当事者のうち一方からしか和解案が出なくても、高裁はそれを基に妥協点を探る方針を示しており、原告側は「事実上の和解協議が始まる」としている。
また、原告側と与党の肝炎対策プロジェクトチーム(座長・川崎二郎元厚生労働相)の面会が実現したのは今月10日。与党側はこれまで「裁判と肝炎対策は別」として、面会に応じなかったが、全国5地裁の判決が出そろったことで、方針を転換したという。同プロジェクトチームは、原告団代表の山口美智子さん(51)ら8人と会い、「早く訴訟を解決し、人生を取り戻したい」という訴えに耳を傾けた。
大阪高裁の和解方針について、川崎座長は「誠実に議論しなさいと厚労省には言ったが、和解のテーブルに着くよう働きかけることはない」と話した。
【ことば】薬害C型肝炎訴訟 C型肝炎ウイルス(HCV)に汚染された血液製剤を出産や手術時に投与された患者が02年10月以降、全国5地裁で順次提訴し、現在、控訴審も含め原告172人が国と製薬会社3社を相手に係争中。今年9月の仙台地裁判決を除き、4地裁の判決が、製剤の副作用が明らかになった時点で規制しなかった国の責任を認めた。原告側からみると1審は「4勝1敗」。C型肝炎は感染から20〜30年後に、肝硬変や肝がんへ移行するケースが多く、裁判とは別に、与野党ともにインターフェロン治療の公費助成を検討している。厚生労働省によると、HCV感染者は150万〜190万人と推定されている。
毎日新聞 2007年10月14日 3時00分

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