大阪高等裁判所平成13年7月31日判決
要 旨
コンビニエンスストアは、年齢、性別、職業等が異なる不特定多数の顧客に店側の用意した場所を提供し、その場所で顧客に商品を選択・購入させて利益を上げることを目的としているのであるから、不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の日常ありうべき服装、履物、行動等、例えば靴底が減っていたり、急いで足早に買い物をするなどは当然の前提として、その安全を図る義務がある。
コンビニチェーンの加盟店の店舗内で、顧客が濡れた床で滑り転倒して受傷した事故において、店舗側に顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、水拭きをした後に乾拭きをするなど、床が滑らないような状態を保つ義務の違反が認められた事例。
右記事故において、当該店舗を経営するフランチャイジーと、フランチャイザーとは別法人であることから、具体的に乾拭きをするなどの義務を負うのは店舗の経営主体であるフランチャイジーであるとされ、当該義務違反に基づくフランチャイザーの不法行為責任が否定された事例。
右記事故において、フランチャイザーに、フランチャイジー又はフランチャイジーを通してその従業員に対し、顧客の安全確保のために、モップによる水拭き後、乾拭きするなど、顧客が滑って転んだりすることのないように床の状態を保つよう指導する義務が認められた事例。
右記事故において、フランチャイザーに、フランチャイジー及びその従業員に対する安全指導義務違反に基づく不法行為責任が認められた事例。
コンビニチェーンの加盟店の店舗内で、顧客(22歳・女・理容美容専門学校の美容講師)が濡れた床で滑り転倒して左肘に受傷した事故において、後遺障害が残存した主たる部位が左肘であり、服装によって外部に露出するのを避けられること、実際に減収が生じていないこと、痛みも持続的なものでないことなどから、将来にわたって減収が生じうることを認めるに足りないとして、逸失利益の賠償が否定された事例。
コンビニチェーンの加盟店の店舗内で、顧客(22歳・女・理容美容専門学校の美容講師)が濡れた床で滑り転倒して左肘に受傷した事故において、被害者が事故当時22歳の女性であったこと、現在でも局部を圧迫すると痛みが残っていること、ただし、左肘瘢痕は将来目立ちにくくなることが予想されること、傷害や後遺障害が大きくなったことに被害者の体質も無関係ではないことを考慮して、傷害慰謝料として130万円、後遺障害慰謝料として70万円が認められた事例。
コンビニチェーンの加盟店の店舗内で、顧客(22歳・女・理容美容専門学校の美容講師)が濡れた床で滑り転倒して左肘に受傷した事故において、被害者が、靴底が減って滑りやすい靴を履いていたこと、パンと牛乳を持って両手がふさがった状態であったことなどを考慮し、損害の発生及び拡大への寄与が5割と認められた事例。
平成13年7月31日大阪高等裁判所第2民事部判決
平成12年(ネ)第4041号 損害賠償請求控訴事件
裁判結果 一部変更、一部控訴棄却
上訴等 確定
裁判官 浅野正樹 東畑良雄 浅見宣義
審級関係 第一審
大阪地方裁判所平成12年10月31日判決 平成11年(ワ)第9936号
参照法令 民法709条/710条/722条
出典 判例時報1764号64頁
判例評釈 鬼塚賢太郎・法令ニュース37巻3号26〜27頁2002年3月
橋本陽子・ジュリスト1231号193〜195頁2002年10月1日
加藤新太郎・私法判例リマークス〔26〕2003〔上〕〔平成14年度判例評論〕〔法律時報別冊〕58〜61頁2003年2月
小畑史子・民商法雑誌128巻4・5号230〜237頁2003年8月

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