【受刑者】(3)拘束下で「罪」を見つめる (1/3ページ)
産経ニュース>事件 2009.3.15 22:10
約8畳、洋式トイレ付きの6人部屋に8人−。受刑者が生活する「共同室」の一般的な収容状況だ。ベッドが2つ。寝るときはその他にも布団を敷くことになるが、何人かはベッドの下に足を突っ込むほど窮屈な状態となる。約3畳の「単独室」は、処遇を決めるために調査を受けている新受刑者が使用したり、懲罰の「閉居罰」の場所としても使われたりするが、通常の居室として使用されることもある。
「単独室希望者が多い。どうしても共同生活ができない者、プライバシーを保ちたい者もいる。精神的に弱い人は共同室のほうが気が紛れていいが、勉強したり、罪について考える機会となると単独室だろう」と話すのは大分刑務所の首席矯正処遇官、三池博(56)。「懲罰を受けてでも単独室に入りたくて、わざと規律違反をする者もいる」ともいう。
法務省が行った釈放時のアンケート(平成19年度)によれば、「受刑生活で苦労したこと」は、「受刑者同士の関係」が79%と突出して多かった。「共同室では他愛のないことでけんかになる。自分は悪くないとは思っても謝る習慣がついてしまった」とは大分刑務所の無期懲役受刑者、吉井孝(30代)=仮名=だ。
平日、受刑者の1日の多くは作業に費やされ、その合間に教育、面会、運動が行われる。面会は、5段階ある優遇区分によって月2〜7回以上許され、1回30分以内。受刑者と面会者は透明のアクリル板で仕切られている。
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「離婚話や身内の訃報(ふほう)といった場面もあり、顔を合わせた途端に涙で言葉に詰まってしばらく話ができない光景も目にする」(三池)。
グラウンドなどでの運動は1日30分以上。入浴は1回15分以内で夏は週3回、冬2回。娯楽は、施設によって違いがあるが、講堂にあるカラオケセットの利用、図書館の書籍類の読書、希望の新聞・雑誌の購読…。歌手らの慰問やクリスマス会など季節の行事も行われる。
テレビは各居室にあり、録画された番組を視聴できる。川越少年刑務所の受刑者、小川大介(25)=仮名=の場合、「歌番組、お笑い、大河ドラマ『天地人』も見ます」。食事は朝、夜は居室、昼は各工場の食堂でとる。
優遇されているように見える受刑者たち。だが、夜間でも15分に1回以上刑務官の巡回があり、常に監視下に置かれている。それが自由を拘束される自由刑というもの。
その日々を受刑者はどんな思いで過ごすのか。秘書給与をめぐる詐欺罪で懲役1年6月の刑に服し、「獄窓記」の著書もある元国会議員、山本譲司(46)は「受刑の重み、遮断された環境は、本人次第だが、自分を見つめる時間にもなる」と服役当時を振り返る。そして、こう付け加えた。
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「もちろんもがき苦しむこともあったが、それは塀の中だけじゃない。今だってある。一生罪と向き合っていく、それが再犯から遠のいていくことになるのではないか」
=敬称略
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平成21年2月末現在、刑務所の定員に対する受刑者の収容率は97・4%(速報値)。過剰収容は17−18年ごろに問題となり、17年度末に全国平均で115%を記録、中には130%を超える刑務所もあった。その後、徐々に解消されているが、6カ所しかない女子刑務所では現在も120%前後の収容率になっている。
法務省矯正局は「新受刑者が入所時の調査を受ける(約2週)間や、規律違反に対する懲罰の一つ、閉居罰(最大30日昼夜間収容)に使うため、単独室は相当数の“空き室”を確保しておくもの。収容率は8割程度が理想」としている。

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