仏文ファンなら、すぐにスガナレルというモリエールの戯曲を思い出すはずの筆名。
アデマによるアポリネールの伝記を訳した、すでに亡くなった鈴木豊、とあえて実名を挙げてもいいだろう。
1972年に二見書房版、1974年に角川文庫版、4巻本の『アポリネール全集』刊行後、1983年に富士見ロマン文庫版で刊行されている。
富士見ロマン文庫は、言うまでもなく、アポリネールのものばかりでなく、角川文庫から、好色関係のものを「移動」させた感じである。
ただし、訳者あとがきなどは、微妙に変わってもいる。
二見書房版で、「邦訳は現在までに二、三あるが、英訳によるものか、抄訳で、ほぼ完全な形での邦訳は本書が初めてである」とある。
書名を挙げていないが、昨日までに扱った清水正二郎関係のはずである。言及されなかったのが残念、とあえて申し上げる。
なお、学芸所林編集部訳の『壹萬壹千鞭譚』は、これより後の、1975年である。
二見書房版のこの記述は、角川文庫版にも引き継がれているが、富士見ロマン文庫版にはないことを、あえて指摘しておく。
また、映画化への期待がなされているが、それは明日に扱う、『若きドンジュアンの冒険』のほうでは、昨世紀末に実現したことを指摘しておく。

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