世の中ゴールデンウィークである。おれも休みができたので、バイクに乗ってくることにした。仕事や家族とうまく折り合いがついて、期間は4日間。仕事もまあまあ忙しい中での4日間の休みは予想外で、出発前から感無量である。
と、それが決まったのが前々日で、にわかに予定を立てる。行き先は、紀伊半島。
5月2日。出発の朝は早い。今回の相棒VTR号に火を入れ、朝6時に実家を出発。遠足となると早起きが苦にならないから不思議だ。
早朝の間に走りなれた滋賀県内を一気走り。信楽では小学生の通学時間で、今日はまだ平日だったと思い返す。健気な子供たちを前に、いい大人は全力で遊ぶ決意をするのであった。
滋賀県からの脱出は国道422号で。三重県に入ってからのこの道は結構なキビしさで、狭くぐねぐねな上に急勾配である。これから向かう紀伊半島を暗示しているようでもある。何せ紀伊半島の山が険しいことは多少経験している。
今回の旅のテーマの1つに酷道がある。字の通り国道の中でも状況のひどい道を走ろうと思っているのだ。紀伊半島はその宝庫でもある。この422号も酷道の1つで、全線を走ってみたい道ではあるが、2ヶ所で分断されている。迂回路もなく、大回りしなくてはならない個所がある。終点は太平洋沿いの紀伊長島で、ちょうど向かう先と合致するので、なるべくこの道に沿って南下しようと思う。
その422号、名張から伊勢奥津までは最近走ったので、香落渓を通ることにする。ダム湖沿いの道や断崖の渓谷を見て走るのは楽しい。石垣を積んだ民家、田舎らしい立派なこいのぼり、美しい川の流れ、バイクを停めると水を張った田んぼから蛙の鳴き声が聞こえる。
422号分断部分の迂回路は県道28号。これは険道。薄暗い杉林の中、1車線の急坂急カーブ。でもこれも良い。杉の匂いが鼻をくすぐる。
国道166号は一転して2車線快走路。カーブもゆるく、頭の中のスピードリミッターもゆるみがち。「この先カーブ多し」「スピード落とせ」の看板に、やだよーん、と軽くツッコんで、ループ橋を走り抜ける。
気分最高潮のまま、再び合流した422号。しかしここで「崩落のため通行止」の看板。むむむ。
いやいや、まだ始まったばかり。国道42号へ迂回。この道は、伊勢の海を渡り紀伊半島の海沿いをぐるっと半周して和歌山に至る大動脈。交通量も多く、ツーリングのバイクも多く、取り締まりの警察も多い。…と、危なかった。対向車が教えてくれた。こんな日に取り締まりすんなよ。でもこれでラッキーとアンラッキーが1つずつ。
伊勢と紀伊の國境・荷坂峠を越えると海が見えてきた。どこまでも続く太平洋。山育ちの人間は海を見ると無条件に感動する。
坂を登って山を越え、下ると港町。これを数回繰り返すと、酷道への入り口である尾鷲の街も近い。その前の腹ごしらえに、道の駅でご当地バーガー「つみなアジバーガー」を。と、思ったら売り切れ。罪な。これで1勝2敗。
今回の旅はどう転ぶか、まだまだわからない。
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香落渓の断崖。「こおちだに」と読むらしい。
国道166号のループ橋。空中に飛び出すよう。
三浦という地の海で。

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