観客のいない舞台で一人、少女は踊っていた。
静かな朝の公園に、少女の鼻歌と靴音が跳ねる。
女性的なしなやかさこそないが、精一杯伸ばした指先からは、生きることへの喜びが迸っていた。
ベンチで目を覚ましたシンは、夢がまだ続いているような感覚に襲われた。
朝日を浴びて舞い踊る姿は、まさに天使だった。
踊り終えた天使は、誰もいない客席に向かってぺこりと頭を下げた。
ふと、観客がいないはずの公園に拍手の音が響いた。
音の方向に少女が目をやると、そこには一人のやつれた男が立っていた。
「素敵だった。名前は?」
「…カオル」
朝露が紫陽花の葉を滑り落ち、水溜りに波紋を広げた。

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