美香はアイドルの卵。性格がとても良いので、会う人は皆美香に好印象を持つ。しかし美香には一つ悩みがあった。写真写りが悪いのだ。オーディションの為にあらゆるところに履歴書を送るのだが、毎回写真選考で落とされる。一つ断っておくが、美香は決して容姿は悪くない。あくまでも写真写りが悪いのだ。
一方、美香とは対照的な人物が同じ事務所内にいた。成美である。成美は性格、容姿とも決して優れてはいないが、写真写りだけは抜群に良いのだ。そのため写真選考はいつも余裕で通過。グラビアの仕事も絶えなかった。
ある時、美香は成美に聞いてみた。
「どうしてそんなに写真写りがいいの?」
成美は自信満々に答えた。
「写真写りがどうこうという問題じゃないの。写真というのは、見たものをそのまま映し出すものでしょ?美しいものを撮ったら美しく写るに決まってるじゃない。」
成美はそう言って美香に背を向けると、不格好な歩き方で去っていった。美香はその姿を見ながら下唇を噛んだ。
ある日、美香がトイレの個室にいると、洗面台の方から成美の怒鳴り声が聞こえてきた。
「ちょっと!また値段上げたの?あんたヨウセイのくせして本当に金にがめついわね!今月ピンチなんだから!」
妖精?美香は成美の怒り様があまりに激しかったので、気になってそっと個室のドアを開けた。気付かれないように洗面台の方を覗くと、怒りをぶちまける成美の奥に、小さな人影が見えた。成美のひざ下ほどの身長の、二頭身のおっさんがそこにいた。
「うわっ、何あれ!」
美香は思わず口にしそうになったのを慌てて飲み込んだ。しばらく成美の攻撃を受けてから妖精は口を開いた。
「いいじゃねえか。金で写真写りが抜群に良くなるんだからこんな楽なことはねえ。お前もそのお陰で飯が食えてるんだろ?」
成美はまだ怒りが収まらない様子だったが、しぶしぶ鞄から財布を出した。
「これ以上値上げしたら払わないからね!」
「へへっ。毎度ありぃ。」
あれは写真の妖精なんだ。成美はあれにお金を払っていたから写真写りが良かったんだ。美香は納得した。成美がトイレから出た後、妖精は受け取ったお札を天井のライトに透かし唇を舐めていた。
「お金さえあれば写真写りが良くなるのね!」
美香は個室のドアに掛けた鞄から財布を取り出し握り締めた。
数ヶ月後、カメラに向かってとびきりの笑顔を作る美香を遠巻きに眺めながら、撮影スタッフが話していた。
「あの子さ、写真で見ると抜群にかわいいんだけど、性格は最悪だってさ。収入でしか男を見てなくて、IT社長なんかと合コン繰り返しては、男をとっかえひっかえしてるらしいよ。」
「マジで?最低。」
美香は相変わらず悩殺的なポーズでカメラに笑顔を向けている。そんな美香の後ろで、照明にお札を透かしながら、あの妖精がうすら笑いを浮かべていた。
「毎度ありぃ。」
読んで頂きありがとうございます!
ランキングのクリックにもご協力お願いします。
↓ ↓
人気blogランキング

0