少しずつ夜が明けていく。凍っていた街が体温を取り戻す。
「はぁ。泣き疲れちゃった。目腫れてない?」
「ひどい顔してるよ。」
僕は笑った。
「もう。最悪〜。」
君も笑った。
「下に降りようか。寒くて風邪ひきそう。」
「うん。」
僕らはネオンがチカつく屋上を後にした。部屋への階段を下りる途中、
小さく震える君の背中がなんだかとても愛しく思えた。
部屋について僕は熱い熱いコーヒーを煎れた。
「ありがと。」
君は、ふーふーと息を吹きかけながら、少しずつそれを啜った。僕は君
に謝らなければならない。君が悲しみの中でコーヒーを口にしていた時、
こたつを挟んだ向かい側、僕はとても幸せな気持ちを感じていたんだ。
よほど泣き疲れたのだろう。コーヒーを全部飲みきらないまま、君は
眠りについてしまった。僕はさっき脱いだばかりのコートを横になった
君の肩にかけてやった。君の両目はまだ腫れていた。ゆっくりおやす
み。せめて夢の中だけでも、君が幸せであるように。
君の寝顔はとても安らかで、そのおかげで僕は地球上で一番平和な朝
を送ることができた。
「・・・俺じゃだめかな。」
朝日の射しこむ静かな部屋に、僕の言葉はすぅーっと溶けた。
「・・なんてな。」
僕は自分に言い聞かせるように言った。二つのマグカップを台所にさ
げ、一人タバコをふかしていると、
「ふふっ。」
きらめく朝日の中、いたずらに微笑む君がいた。

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