「hana Another story(3)後編」
番外
hana Another story・・・・
〜猫道〜第三夜 崩壊の兆・後編〜
『華凛!!』
母様が、叫ぶ声。
姉さまの凍りつく表情。
私が目にした最後の光景は赤々と滴る炎とそれを飲みこんだ暗い闇夜。
重たくなった体に異変がやっと伝った。
胸部に刺さる痛みは現実。
次々に倒れ行く猫の一族たちと同じ、戦いが喰らった一つの魂。
あの時、兆しにやってきた重症の民と同じなんだ。
重たい石の様に体がままならなくなって、散り行く炎粉そのもの。
・・・命は尽きた、虚ろに感じた時間。
母様が助けてくれなければ、終わった魂。
鈴守りとしての力を全て注ぎ、私の代わりに散ってしまった。
姉に、私を守り二人でなんとしても生き抜くようにと・・・。
これが、母として出来る最後の贈り物になるからと。
絶え絶えに『蛇国の日和さまを頼って行きなさい。』とぽつり言い残して。
鈴守りの力を受け、鈴音彦様に近づくことで取りとめた私の命。
しかし、その力を受け入れる様に造っていない体は今の形を留めておくことは出来なかった。
・・・元ノ姿ニ戻ル。
それが、引き換えに与えられた反動。
生の粒子が赤子に戻してしまうことで崩すことなく調和を保ち続けたのだから。
それから記憶が戻るまで体の成長とともにかかった。
姉が私を連れて五年ほど流浪し育て、蛇国に預けるまで姉はどれほど闘ってきただろうか。
追われる中で守り続けることはどんな痛みと引き換えにしてきたんだろうか。
時折、うっすらと憶えている掌の温もりを思い出す。
追われる中、蛇国の森へやっとたどり着いた時が最後。
森の中で外見のあまり年頃は変わらない女の子が、薬草を探してしゃがんでいた。
茂みからぐいっと姉に引っ張られ、女の子の前へ連れて行かれた。
『貴方の印は・・・・蛇国の血族の子供ね。この子を当主の元へ。』
姉はきょとんとした白蛇の娘に悲願の眼差しを向け直す。
『この子は華というの。この子を、あなたのお父様の所へ連れて行ってほしいの。』
その言葉と瞳に何かを感じたのか、コクリと頷いた。
それを確認した姉は、潤んだ眼を細めて安堵しその場を立ち去った。
『この書き物をしっかりにぎって、当主様に見せなさい。
それから・・・・必ず生きなさい。また、会えるから、ね。』
姉は言い残した言葉を理解していた。
・・・・私の為に去ったのだと。
自分といるよりもここで行き場をなくした唯の猫族の末裔として生きるほうがいいと。
それから、坂道を”白蛇の女の子”に手を引かれ下った。
私の手を招くのは、姉からこの子に変わったような気がした瞬間だった。
ああ・・・。
随分と遠い時間のようで、今も鮮明に残る私だけの昔話。
ちりん・・・ちりりん・・・。
散り去った人々が泣いている。
忘れないでと泣いている。
華として今を生きる魂とともに在るように。
ちりん・・・ちりりん・・・。
゚・*:.。. .。.:*・゜hana Another story・END゚・*:.。. .。.:*・゜