「hana Another story(3)前編」
番外
hana Another story・・・・
〜猫道〜第三夜 崩壊の兆・前編〜
「あの噂は真なんだ・・・。」
横たわる遺体を取り囲むざわめきが幾重にも重なる。
不安は一層強いものへ、予感は確証へ移り変わった。
その空気を断ち切るように、五和がきりりとした声を張り上げる。
「各集落は近隣に出ている男手を呼び戻し強化にあてよ。
女・子供は中心集落に集め万が一に備えさせよ。」
ざわついた集落の民を掻き分け、冷静さを呼び戻す事。
それが頭としての強さだと教えられる姿。
しかし、握りしめられた五和の拳は本当の心を語っていた。
民を守り避難と戦いに備えてのすばやい行動と、同時に要求される大国に向かう戦力不足。
責任の分だけ震えに変わっていた。
それが、父・五和の完全な姿を見た最後だった・・・。
それきり男手を退いて出た父の顔を見ることもなかった。
慌しく三つ集落が警戒態勢に入ったが既に時は満ち足元まで及んでいた。
竜の国の対応は思ったより早いものだったのだ。
兆しが訪れてから1日とたたない夜、現実となって押し寄せて全てを飲み込んだ。
数で勝てるわけもなく、潜み的確に敵兵を狙ったとしても押されてゆく勢い。
火の粉が集落を包み、互いの兵の断末魔と金属音が混ざり合っている。
まさにここは生の世界ではない・・・。
その時の私は姉に手を引かれながら、母の声を聞きながら瞳を見開いたまま、
私は足が地に張り付いていた。
びゅうっ。
何処からか空気を裂く音が舞い、
鈍い光を放つ先端が体に痛みを感じさせる間もなく埋もれた。