「hana Another story・猫道(1)」
番外
hana Another story・・・・
〜猫道〜第一夜 空鈴の音〜
ちりん・・・ちりりん・・・。
私の足には、いつまでも外れることの無い鈴が付いてまとう。
歩くたびに、私だけに語りかけてくれる。
決して人に聞こえたりはしない、音。
この鈴の存在すら他のものには見えない。
なぜなら、この鈴はもう数多の聞き手を失ってしまったから。
一族はもう聞ける耳さえ無いのだから。
私たちは大地に住まうちいさな者達、身を寄せて身内ばかりの暮らしだった。
国を成すことは出来なかったけれど、私たち猫の一族は集落をいくつか持って連携しながら生活を営んでいた。
大国のような豊かな経済が備わっているわけでなく、
外部へ出かけたり、育てた穀物と交換し物を調達する事で生計を立てる暮らしぶり。
それでも、満ち足りていた。
戦闘に長けている事で一目を置かれている血族だったが、
本来は、穏やかに過ごす方が向いている。
「この耳は、敵の足音を聞き分ける為にあるんじゃないの。
風のささやき、水脈の流れ、土の再生、木々の芽吹き、
その小さな歌を聞いてあげるの。
この眼は、闇夜に紛れた魔物を捕らえる為にあるんじゃないの。
生の粒子が集まって出来たこの世界・・・その命が産声を上げ、そして還る。
その事を見届けつづけるためにあるの。
伸びやかな体は、すばやい攻撃をよけるためにあるんじゃないの。
柔らかい体でこの世を感じ、鳥に寄り添い空となり、魚とともに水の子の様に、
鹿のように土を蹴り、蝶のように花に群れる・・・そのためにあるの。」
そう・・・、私たち猫の一族の子供達は親に言い聞かされ育てられる。
かつて、私が”一族”と呼ばれていた頃の懐かしい物語。
今では、その集落があった場所も、家族のことも誰に明かすこともない。
母がいて、父がいて、兄と姉が微笑む世界はもうお伽話。
二日間の朱色が滴る、終幕と誕生が共存した時間。
紛れも無く私は無力だった。
偽りも無く、さえずることすらできず、
湿った闇に魂を・・・落してしまった。
あの夜にはもう還れない。
掘還したとて、事は粒子に還ったのだから。
私だけを残して・・・還ったのだから・・・・。
゚・*:.。. .。.:*・゜猫道・第一夜 終わり゚・*:.。. .。.:*・゜
第二夜につづきます・・・。