〜波久、15歳前夜に降りそそぐ星空(中編・3)〜
「そう・・・私の気持ちは・・・。」
波久はその言葉の先に躊躇っていた。
いぶかしげに、私の様子をうががっている古都に何もいえないまま、
唯つったっている。
簡単な問いかけなのに。
自分にしたがう好機なだけ・・・。
それだけなのに、まだ躊躇うのはなぜだろう。
『周りの期待や巫女と白蛇の清らかさ、という象徴に・・
・・・・・・応えるのがアタリマエ。』
いつも、本心を誤魔化すことばかりが上手くなって、
期待道理の笑顔を刻むしわばかりが滑稽。
本当は、笑ってる自分が一番嫌いかもしれない。
『そう、だれだって、嫌われたくない。
・・・・一族の弾き者でいたくない。』
黒蛇の力に怯えていた古都が臆病だったんじゃない。
自分が一番卑怯だってわかる。
答えをだす辛さより、
決まった道と御大蛇様のせいにしていれば私は・・・
・・・・・ラクなんだ。
古都はこの数年で、一族や民に卑下されている待遇に負けるばかりか
新たな道を探し出している。
変化を拒まない強さ・・・。
出そうになっている本心を、きつく結んだ唇が辛うじて封じてくれている。
ここには二人しかいない・・・けれども、迷ってしまう。
「いいんだ、波久。無理には答えなくてもいい。
困った顔は見たくないよ・・・」
いつも、古都は優しい。
その、低くて暖かい余韻を残す声が好き。
ふわりと、なびく春風みたいに柔らかい。
冬風にさらされて冷え切った私を見つけにきてくれた。
・・・・だから貴方に賭けてみてもいい?
貴方と違う世界を見てみたくなったの。
きっと、今夜私を見つけてくれなかったら、
御大蛇さまに捕食される前に偽った自分にに押し殺されていたのね。
貴方の ”いてほしい・・・”が、
置いてきぼりだった心を見失わない今夜を呼び寄せたのかもしれない。
闇夜にポツリと、波久は奏でる。
「古都・・・・1年後の未来も・・私は貴方と一緒にいるわ・・・・。」
この一言がまず、自分にできること。
それからは二人で考えたらいいの・・・・。
波久の意外な反応に古都は少し驚いたが、
月闇の中でふっ・・とたまらない程の笑顔がこぼれた。
光の濃淡が、彼の細めた目をやんわりと映し出してくれる。
・・・・これを求めていた。
巫女としての私より、波久を選んでくれる人を。
だれも、”波久”を見ていない気がしていたから。
「きっと、きっと、きっとだぞ・・・・波久。」
「ええ・・・きっと、きっと・・・・ね・・・。」
闇夜が溶け合うとき、それは古の戦いが繰り返される”運命劇”の始まり。
それでも、もう一度巡って誓う。
運命論にすぎなくても、壊してみせる。
細く消えそうに繋いだ、貴方と私だけの”秘密呪”。
一年後にかけた、二人の言霊・・・。
きっと叶えてくれるでしょう?
貴方と私は闇夜に放たれた”双子星”。
いつ、いつまでも夜空で離れないの。
この大空の中で迷ったりしないで、ずっと共にいる。
そう、決めたのは”私”なのだから。
〜波久、15歳前夜に降りそそぐ星空(中編・3)終〜
次回は後編がありますよん・・・・
★ランキングにご協力お願いします★
→
元祖ブログランキング
→
人気blogランキングへ
→週刊!ブログランキング;
http://kutsulog.net/
★一票ありかとうございました★
解説;
@ひみつ-じゅ (秘密呪) ;〔仏〕 真言秘密の呪文。真言陀羅尼(だらに)の総称。
というのが本来の意味ですが、ここでは
『他言無用で内緒で交わした言葉(約束)を言霊にのせた呪』
として使用させてもらってます。
「嘘ついたらハリセンボン、飲〜ます!」って歌がありますよね?
そういう、雰囲気を思い描いています。
A運命論:一切の出来事は運命によってあらかじめ決定されており、
人間の意志や選択は無力であるとする考え方。宿命論。宿命観。