〜波久、15歳前夜に降りそそぐ星空(中編・2)〜
「ちゃんと、話したいこと?」
こんな蛇国がにぎわう夜に、古都が話そうと意を決する内容だから、
お別れの言葉でも用意してきたのかしら?
だとしたら、投げ飛ばしてやる。
「ああ、一度しか言わない。それで波久の気持ちを知りたいんだ。」
弟の声は、いつになく慎重で単語を選んで話している。
「わかった。言って頂戴・・・。」
何を話すのか内心は不安でたまらない。
丘から、民家の明かりが揺らめいて見える。
今の気持ちみたいにゆらゆら・・・と。
「俺は、波久を御大蛇様に渡すつもりはない。」
弟は、なんという事をいってのけるのだ。
寝転がったままの古都の表情は見えないけれど、
きっといつものように眉間に皺をよせているだろう。
ただ、冬の冷たい風にさらされながら、話の続きをまっている。
「俺の力は、破壊だと聞いて育った。けれど、波久はいつか言ってくれたな・・・。
『良くも悪くも、意味のないことはないのだ』って。
この左腕の黒蛇印をみてくれないか?」
古都は左腕へむけて言霊をかける。
「鴉、出てきてくれ・・・」
それを、待っていたかのように黒い蛇印は古都の左腕から立体的な姿を現した。
屈服しない気高さを漂わせて・・・。
波久は驚き以上、息が止まるかと思う衝撃だった。
具現化することは稀だと聞いていたから・・・。
まさか、それをこの目で見る日がくるとは思いもしなかった。
「なんなのよ・・・・・・。」
その一言が精一杯。
鴉と呼ばれている蛇印がこちらに視線をよせると身動きすらできない。
これが、蛇目(カガメ)とよばれる魔性の力。
睨まれた者は、獲物・・・。
でも・・・・この蛇、みたことがある・・・。
どこかで・・・。
「この力が覚醒してからまだ間がないんだが、この鴉が教えてくれた。
この力の意味を・・・。」
愛しむように、黒蛇を”鴉・・・”と呼ぶ。
この弟を逞しく変えた一つなのだろうか・・・。
「なんと教えてくれたの?」
その理由がしりたい。
弱虫だった弟を変えたのはなんなのか・・・。
私のしらない古都・・・。
「御大蛇様に決められた理を変えるための兆しなんだって。
そんな大それたことは、本当はどうだっていい。
ただ、波久が守れれはそれでいい・・・んだ。」
後ろをふりかえると、古都は首を伸ばして星を見上げている。
月明かりで見える顔は、”決意”だった。
「それが、どういうことが・・・わかっているの?」
そう・・・とてつもないこと。
民も、国も、血族も、敵に回す。
神さえも・・・。
「ああ・・・。よく近所の子供になじられてた時、波久が追い掛け回して守ってくれた。
だから、今度は俺が守る。波久はどうしたい・・・?
お前が望むようにする・・・。」
古都は大変な反乱さえ構わないっていってくれる。
私の気持ちは・・・・・・・。
キモチは・・・・・・。
この月夜に任せて、溶け出した双子の決意は・・・
深い心の霧に光が差し込んで、いつになく素直なさせる。
迷っては、誤魔化してきた言葉たち。
今こそ、言霊にのせて伝えようか?
寒さに身を寄せ合うように、心を寄せて・・・・。
〜波久、15歳前夜に降りそそぐ星空(中編・2)終〜
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