2018/6/23

1950年代幻灯上映会「平和特集」  イベント

毎年恒例の丸木美術館1950年代幻灯上映会。
今年は「平和特集」ということで、生誕100年を迎えた鈴木賢二が手がけた幻灯2本を含めた3本立てのプログラムでした。
企画・作品解説は、おなじみ気鋭の映像研究者・鷲谷花さん。
いつも興味深い企画をありがとうございます。

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以下、鷲谷さんによる概説と作品解説です。

【概説】

1952年4月のサンフランシスコ講和条約発効後に本格的に高揚した反戦・平和運動において、映画よりも携帯性が高く操作の簡単なうえに、スクリーンに鮮明な映像を大きく映し出せる幻灯(スライド)は、使い勝手の良い映像メディアとして広く活用されました。イラストレーション、写真、人形劇、影絵など、さまざまな手法を駆使した反戦・平和幻灯が作られていますが、今回は北関東造型版画運動の中心となった版画家・彫刻家の鈴木賢二が作画した影絵幻灯2点と、ベルトルト・ブレヒトの写真詩集『戦争案内』の幻灯版を、岡崎弥保さんの朗読により、オリジナルフィルムと幻灯機を用いて上映します。

【上映作品解説】

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『インディラ物語 象トンキーの死』(1952年)
製作:日本幻灯文化株式会社
作:スズキケンジ(鈴木賢二)
フィルム提供:神戸映画資料館
1943年に上野動物園で殺処分された象の実話に基づく影絵幻灯。同じ実話を基にした創作としては、1951年初出の土家由岐雄の童話『かわいそうなぞう』が名高いが、実際の上野動物園の象の殺処分は、連合軍による日本本土空襲が本格化するより以前の出来事だったにもかかわらず、空襲下の出来事であるかのように物語られる時系列のずれは、『かわいそうなぞう』と本作とに共通している。一方、戦時中の殺処分以来、象が不在だった上野動物園に、1949年9月にインドから贈られた象インディラが、殺されたトンキーの物語を、当時を知る飼育係のおじさんから聞かされるという枠物語は本作のオリジナルであり、上野動物園へのインディラの贈呈が、戦争の犠牲となった象たちの記憶が掘り起こされるきっかけとなったことを伺わせる。

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『ヒロシマの子供たち』(1952年?)
製作:日本教職員組合
絵・文:スズキケンジ
フィルム提供:神戸映画資料館
幼時に被爆した少年の原爆症による死を物語りつつ、反戦を訴える影絵幻灯。一般には火傷の瘢痕を指す「ケロイド」の語が、独自の解釈で用いられていることなど、正確な事実に即しているとは言いがたい描写も含まれる。『原爆の図』や絵本『ピカドン』の影響が伺われる構図が散見されるほか、ラストシーンは清水宏監督『蜂の巣の子供たち』(1948年)に類似しており、同時代の原爆に関するさまざまな情報・表現の再利用から成り立つ作品ともいえる。

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『戦争案内』
原作:ベルトルト・ブレヒト
編集:関西幻灯センター 古志峻・田窪清秀・高原宏平
製作:日本幻灯文化株式会社
版権所有:ドイツ民主共和国ベルリン オイレン・シュピーゲル社
フィルム提供:神戸映画資料館
ベルトルト・ブレヒトによる、第二次世界大戦時の新聞・雑誌報道写真の切り抜きを集め、それぞれに短詩を付した写真詩集『戦争案内 KRIEGFIBEL』(1955)の幻灯版。翻訳・編集は関西国民文化会議「ドイツ・グループ」のメンバーが担当した。『戦争案内』の日本語による紹介としては、本作が最初の試みであるといえるが、オリジナルの写真詩集から、約半数にあたる38コマを抜粋して再構成したダイジェスト版となっている。

※本プログラムはJSPS科研費18K02022「近現代日本の社会運動組織による「スクリーンのメディア」活用の歴史・地域的展開」(研究代表者:鷲谷花)の助成による
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/kikaku/2018/20180623magic_lantern_leafret.pdf

今回の朗読は、絵本『ひろしまのピカ』などの朗読でおなじみ、俳優・語り手の岡崎弥保さんにお願いしました。
安定感のある澄んだ朗読は、幻灯上映の魅力をいっそう引き出していました。
ご来場くださった皆様に、心より御礼申し上げます。

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