2018/4/28

風間サチコ展「ディスリンピア2680」開幕  企画展

風間サチコ展「ディスリンピア2680」展が開幕しました。
新作《ディスリンピック2680》は、縦2.4m×横6.4mの巨大な木版画。風間さんは作品搬入後も展示室で最後の彫りの作業を続けましたが、それでも間に合わず、結局、昨夜は徹夜となりました。

クリックすると元のサイズで表示します

展覧会初日の朝を迎えても彫り続け、ついに開館時間を過ぎてしまったので、午前中はなかば「公開制作」状態。それでも無事に刷り、展示の作業が進み、午後2時15分のトーク開始時刻の30分前に、ようやく展示が完了しました。

クリックすると元のサイズで表示します

オープニングトークは、岡村が聞き手をつとめ、展覧会を企画した経緯を説明し、風間さんが作品に込めた意図をお聞きしました。
会場には若い世代の姿も多く見られ、約50人の参加者でほぼ満席となりました。

クリックすると元のサイズで表示します

架空の都市ディスリンピアで近く行われる優生思想の祭典ディスリンピックの開幕式。
トークでは、大画面のあちこちに配置された歴史的背景とユーモアのある小ネタを、風間さんが楽しそうに解説してくれました。

クリックすると元のサイズで表示します

会場には解説を置いていないので、風間さんの語りは、作品意図を知る上でとても重要です。
そのためトークで語られた内容を、事前の資料をもとに、以下に簡単にまとめておきます。

クリックすると元のサイズで表示します

画面中央上空には、卵が割れて、「日出づる処」の完璧な母体としての太陽が出現しています。その「卵子」を目指して、「祝砲」から完璧な男性(国民の弟)が発射され、一直線に「卵子」に向かって飛んでいきます。

スタジアムはナチスの建築家アルベルト・シュペーアの「廃墟の価値」にのっとり、廃墟であり建設中であるような曖昧な姿をしています。具体的には2013年に閉館した「なにわの海の時空館」を参考にしているそうです。

スタジアム中央には、ダンテの『神曲』からの引用である「煉獄山」、トレーニングセンターで錬成する少女達のモニュメントがそびえ、未来の母親である少女達に「健康たれ」というプロパガンダを伝えています。

クリックすると元のサイズで表示します

画面左側は建設中の新国立競技場を背景に、選び抜かれた「甲種」青年による労働奉仕団が入場行進をしています。
この行進を描くため、風間さんはレニ・リーフェンシュタールによるナチスの記録映画『意志の勝利』を何度も見て参考にしたそうです。

クリックすると元のサイズで表示します

スタジアムの上空には、華やかな祝祭の恒例として平和のシンボルである白い鳩の群れが舞い、灰色の土鳩は、弓兵によって射落とされています。

クリックすると元のサイズで表示します

画面中央では、体操着の「乙種」少女がマスゲームを演じ、全体主義の美を体現し従順を誓っています。
浮かび上がる人文字は漢数字の「二六八〇」。ちなみに(皇紀)2680年は西暦の2020年に当たります。

クリックすると元のサイズで表示します

画面右側は、スタジアムの建設材料であるセメント鉱山を背景に、選別され排除される「丙・丁・戊」の未来を絶たれた魂たちが、基礎工事の生コンクリート打設とともに、人柱として埋められていきます。
右端に見える嘆きの表情をした古代の石像は、人工的に欠損した女性像、石女(うまずめ)です。

この作品で演じられている華やかな祝祭は、理想世界の生命の賛歌であり、同時に間接的殺人の地獄であるというわけです。

クリックすると元のサイズで表示します

今回の展覧会には、《ディスリンピック2680》のほかに、《人間富嶽》と《決闘!硫黄島(近代五種麿参上)》の2作品も展示しています。
こちらは、昨年、府中市美術館で公開制作され、横浜トリエンナーレにも出品されていますが、《ディスリンピック2680》の前哨戦とも言えるシリーズで、その連続性をあらためて見ることができます。

クリックすると元のサイズで表示します

《人間富嶽》についての風間さんの解説文

=====

“富士は日本一の山”という歌詞で昔から学童が学んだように、富士山は日本人の誇りであり「一番」の象徴です。その裾野には演習場が広がり、戦前の帝国陸軍時代から現在の陸上自衛隊に至るまで厳しい戦闘のトレーニングが行われています。このアルミ箔の襖絵には、日本一の象徴「富士山」の裾野でトレーニングを積む陸軍と陸自の戦車と、人間ピラミッドという名の組み体操に励む学生の姿を描いています。人間ピラミッドは、リスキーで危険な体操ですが、「子供に達成感と成功体験を与える」体育として近年まで小中学校で盛んに取り入れられていたのです。このような軍国教育まがいの精神論が、いまだに幻の重爆撃機「富嶽」の機影のように日本の上空を飛翔しているようです。与えられた課題の達成は、本物の金メダルではなくアルミ箔製のフェイクの銀メダル程度の価値で、人間ピラミッドのように危険で崩れやすい…それをアルミの安い輝きで表現しました。

=====

クリックすると元のサイズで表示します

《決闘!硫黄島(近代五種麿参上)》についての風間さんの解説文

=====

この作品の主人公、近代五種麿男爵はオリンピック競技の近代五種で競われる全ての種目(水泳、マラソン、フェンシング、射撃、乗馬) のモチーフを象った甲冑姿をしたヒーローです。そして、その甲冑の中に宿る精神は、金メダリスト西竹一男爵の霊魂です。彼は1932年ロサンゼルスオリンピックの馬術競技で金メダルを獲得する栄誉を受けたのち、1945年戦車連隊隊長として硫黄島で戦死しました。戦争の機械化(近代化)が、馬から戦車に移行し発展した歴史を象徴するかのような西竹一の魂が、現在も硫黄島で果たし合いの相手を待っている…そんなファンタジーを描いた作品です。

=====

この《ディスリンピック2680》をはじめとする主要作品を網羅した風間さんの初めての作品集(朝日出版社、予価3000円+税)が7月下旬に刊行される予定とのことで、会期中は丸木美術館で予約注文を受け付けています。
今日もさっそく、トークの会場で申し込みをされる方がいらっしゃいました。

展覧会の会期は7月8日まで。ぜひ皆さま、この世紀の祭典を、実際に「生で」ご覧になって下さい。
1




※投稿されたコメントは管理人の承認後反映されます。

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ