2017/9/16

原爆文学研究会in広島大学  調査・旅行・出張

午後から広島大学東千田未来創生センターにて原爆文学研究会に参加。
念願の『〈原爆〉を読む文化事典』(青弓社)が刊行され、世話人代表の川口隆行さんも、本当に嬉しそうでした。

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この事典は、私も「「原爆の図」と全国巡回展」と「東日本大震災後のパフォーマンス・アート」の2項を担当しましたが、研究会結成以来17年目の大事業ですから、創立会員の方々の感慨は一入でしょう。
この事典は、丸木美術館でも取り扱いますので、ご興味のある方は「丸木スマ展」とあわせてぜひご覧になって下さい。

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今回の研究発表は、市田真理さんによる「第五福竜丸・久保山愛吉さんに寄せられた3000通の手紙」、宮川健郎さんによる「那須正幹と原爆―『〈原爆〉を読む文化事典』・「教育と原爆児童文学」補遺―」の2本。
そして「原爆文学」再読のテキストは林京子さんの『再びルイへ。』、発題者は島村輝さんと村上陽子さんでした。

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この研究会の重要な特徴は、「文学」を限定的にとらえるのではなく、多様な分野の幅広い表現を取り上げていくこと。
そのため、ビキニ事件で被爆し、半年後に亡くなった久保山愛吉さんとその家族、他の乗組員たちに国内外から寄せられた手紙の数々も、立派な研究対象となります。

むしろ、今回の市田さんの発表は、手紙という表現が、いかに書き手の意図を超えて、社会的な問題を露わにしていくのかを考えさせる、とても興味深いものでした。
ビキニ事件は、戦後の日米関係や核の矛盾の象徴のような極めて政治的な事件ですが、発表後の討論では、激励であれ、補償金をめぐる中傷であれ、問題が久保山さん「個人」に矮小化されてしまう点においては、実はそれほど違わないのではないかという指摘もありました。
こうした構造は、たとえば福島原発事故や沖縄基地問題など、現在の状況にも共通しているのかもしれません。
3000通という膨大な量の手紙を、市田さんが今後、どのように読み解き、まとめていくのか、楽しみに待ちたいと思います。

宮川さんの発表は、児童文学における「理想主義」というパターン化された枠組みを、いかに「多声化」していくかという内容で、個人には《原爆の図》の読み解きにもつながる問題として聞きました。
那須正幹さんは、子どもの頃に『ズッコケ三人組』シリーズでたいへんお世話になり、『絵で読む広島の原爆』も読んでいたのですが、宮川さんが「子どもをめぐる問題は、子どもの力によって必ず乗り越えられるかどうかわからないという考え直し」をした画期的な作品と評価する『ぼくらは海へ』は未読だったので、さっそく読んでみようと思います。

そして、林京子さんの『再びルイへ。』は、個人的にはちょっと難しいところもありましたが、村上さんの緻密な分析、そして晩年の林さんと近しい距離にあった島村さんの読解などを聞いて、あらためて読み返したいと思いました。。

   *   *   *

研究会の後は、近くの居酒屋で恒例の懇親会、場所を移して2次会。原文研の方々は相変わらず賑やかでしたが、カープの地元優勝の可能性が遠のいた広島の街は、心なしか静かでした。
台風の近づく夜は更け、さらに3次会へと向かうコアなメンバーと別れて、ホテルに戻ったのは日付の変わる直前でした。
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