2017/5/4

『中国新聞』 原爆の図丸木美術館50年 他者の痛みを知るために  掲載雑誌・新聞

『論』原爆の図丸木美術館50年 他者の痛みを知るために
 ―2017年5月4日『中国新聞』論説委員・森田裕美

記事全文はこちらからご覧いただけます。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=71532

中国新聞論説委員の森田裕美さんが、開館50周年を前に、丸木美術館についての論説を書いて下さいました。
以下に、その後半部分を抜粋して紹介いたします。

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 海外でも被爆70年の一昨年は、原爆を投下した米国に渡り、昨年はドイツ・ミュンヘンでの現代美術展に出展された。いずれも「政治か芸術か」という二元論を超えて受け入れられたという。それは、「原爆の図」が被爆という歴史の記憶でありながら、見る者に多様な「痛み」を想像させる現代美術として捉えられているからではないだろうか。

 いま、国内外に「自国第一主義」やその裏返しとして他者を排除する空気が広がる。「原爆の図」のような、他者の痛みを「わがこと」として捉える力が弱まっているのではないか。

 岡村学芸員は「実際に体験をしていなくても他者の痛みに近づこうとした丸木夫妻の思いを、今こそくみとりたい」と話す。なるほど、夫妻はこんな時代が来ることを予期して「原爆の図」を描き、美術館を残したのかもしれない。

 同館は50年の節目に「原爆の図保存基金」を立ち上げ、市民に寄付を呼びかけている。将来に向け二つの計画を実現するためだ。

 一つは温湿度管理や虫害対策のできる展示室と収蔵庫を備えた新館建設だ。現在の建物は「自然な状態で見てほしい」との夫妻の思いから造られたため、美術品保管の面からは設備が不十分だ。虫食いや紫外線などによる傷みが避けられず、このままでは永続的な展示は難しくなる。

 もう一つは、デジタルアーカイブの整備という。丸木夫妻の千点を超える絵画作品に加え、著作や書簡、発行物などの膨大な資料を公開できる状態に整理し、インターネットなどでの発信を目指す。作品と共に、制作過程や社会にどう受容されてきたかを伝える記録を残すことは、今を生きる世代の大きな役割だろう。

 被爆から72年。皮膚感覚で痛みを語ることができる体験者は年々減っている。広島でも体験していない世代が原爆や戦争の記憶を受け継ぐ限界を、嘆く声がある。でも丸木美術館で「原爆の図」に向き合うたびに思う。想像力で迫り、伝えることはできる―。丸木夫妻の歩みは、継承の可能性に気付かせてくれる。


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長年、原爆の取材を継続的に重ねてきた地元・広島の新聞社の論説に、朝から多くの反響が届いています。
森田さん、どうもありがとうございました。
開館50年の節目に、そして原爆の図保存基金に向けて、大きな弾みがつく記事です。
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