2015/7/30

もう一つの日本文化(「カムイ達T‐チロンヌップ母さんとの出会い」)  文化・芸術
 このブログの更新も1年を超えてしまった。こんな状態では読みに来る人もいないだろうと思いきや、実態は、2007年3月の開始以降、日々のアクセス件数(カウント)は、少ないながらもそれほど変わらないのだから不思議だ。

 ともあれ、更新もしない古い内容でも一定数のアクセスがあるということは、このブログのテーマである「アイヌ文化」に興味を持つ人が、新たに増えているということではないかと考える。
 これは嬉しいことだ。

 さて、更新をしなかったこの1年間、私はアイヌに関わる活動を何もしてなかったのかというと、そうでもない。あくまで個人レベルだが、却って増しているのが事実だ。では、なぜ、ブログ更新をしなかったのかというと、理由は複合的だ。

 「意欲が弱まった」、「面倒になった」、「仕事が忙しい」などという怠慢も確かにある、が最も大きい理由は別にある。

 それは「アイヌとの関わりが、より個人的なもの、より深いものになった」ということ、そして、「そのアイヌは職業や公的な助成金を得ての活動をしているのではなく、あくまで[個人的な活動]である」ことから、その内容をブログに公開することは不適当と考えたことだ。

 ということで、今回も含め今後の内容は、どちらかというと公開要望があるものなどが中心となることをお断りしておく。

 
<その1「アイヌ居住地訪問の旅」>

 昨年6月30日のブログで、「アイヌをテーマにした市民講座を受講した」ことを書いた。併せて、関連する4冊の小冊子についても触れた。

 この小冊子の内容は、明治中期以降、空知地方の石狩川沿いに住んでいたアイヌが、日本政府により[新十津川のウシツベツコタン]に強制移住させられたことや、そこが市街地として発達してくる(日本人が土地を使いたいとの圧力が増す)と、さらにそこを追われ、[農業にも不適な奥地]に再移住させられた話や、そういった事柄により人生を翻弄させられた[太田シモ(アイヌ名:コウンテカン)媼]の話などである。

 私はこの小冊子を読み終えた後、とあるアイヌ女性に差し上げたのであるが、その方から、『太田シモ媼(明治29年生まれ)の居住地移転を辿ってみたい。』という希望があった。

 このようなことから、昨年8月末に、私、そのアイヌ女性、私の友人の中国人女性の3人で、太田シモ媼の軌跡を巡る旅を行った。

 具体的には、@深川のイチャンコタン跡、A雨竜のフシコウリウ(フシココタン)跡、B新十津川のウシツベツコタン跡、C新十津川のワッカウェンベツコタン跡の4か所を巡った。

 実際に巡ると、日本政府(日本人)がいかにアイヌに対し過酷な仕打ちをしたのか、つまり、アイヌが住んでいた元々の土地を取り上げ、山奥の農業に適さない土地に追いやったのかが実感できる。

 太田シモ媼は、晩年、昭和40年代に政府の減反政策による補償を受けて、ワッカウェンベツコタンから離農、旭川に転居するのであるが、[ワッカ‐ウェン‐ベツ]とは[水‐悪い‐川]という意味であり、現地の川は、雨が降ると直ぐに水量が増え、水が濁る「暴れ川」だったという。いい土地ではなかったのだろう。

 ともあれ、こうして、この「アイヌ居住地訪問の旅」は終了したが、その1か月ほど後、件のアイヌ女性から電話があり『太田シモ媼の娘さんが旭川に住んでいるらしいのだが、探せないだろうか?』という依頼があった。

 ある方法(違法ではないが推奨できないので記述しない)で、候補を提供したところ、娘さん本人と判明し、会いに行ったとのこと。私としても、微力ながらお役に立てたことは嬉しい限りだ。

 さて、先ほど「日本政府(日本人)がいかにアイヌに対し過酷な仕打ちをしたのか…」と書いた。

 この強制移住などの仕打ちは、明治中期以降、昔の話である…が、私は、「日本人は近年においても、意識としては同様ともいえる過酷な仕打ちを続けている。」と考える。

 根拠を示す。

 この「アイヌ居住地訪問の旅」を実施するに当たっては、訪問先市町村などが発刊した「(市町村)百年史」的なものを数巻利用した。それはとても役に立った。感謝している。
 だが、平成6年に深川市が発刊した「新深川市史」の次の記述は問題だ。

 「…植民地選定の調査団一行がこの深川に入ったのは、明治二十年六月のことでした…調査の結果で…「メム」と「イチャン」にアイヌの人たちが居住していることも確認されています。この人たちは、ほどなくしてこの深川のそれぞれの「原野」へ移住してくる新しい人たちへ後事を託す役割を担うことになるのですが…まさに歴史の担い手の交代の時期がやってきたのです。」

 強制移住させられたアイヌに対して、[後事を託す役割を担った]とか、[歴史の担い手の交代の時期]とか、の事実認識となっている文章は、明治時代のものではない。
 発刊した平成6年に書かれたものだ。

 このアイヌに対する侮蔑的な文章の問題は、奥付に記されている執筆者の2名の大学教授が不見識だったということだけではない。

 この文章は、深川市という行政機関、公的機関が自己の歴史書(公的な歴史書)として内容確認したの上で、発刊されたものだ。

 厳密に文章(言葉)を選ぶべき行政(公的)機関において、責任ある複数の人間が確認しているはずである。
 韓国の主張ではないが、誤った歴史認識を有してために、深川市においては誰も問題があると意識しないまま、このような表現で発刊されたということだ。

 【日本人のアイヌに対する意識、認識は、明治時代も、平成6年も、なんら変わっていない。】ということになる。
 *該当部分コピーのPDFファイルを添付する。
  h6hukagawa.pdf

<その2 エッセイ「カムイ達T‐チロンヌップ母さんとの出会い」>

 先日(7月下旬)、人を介して、日高支庁管内に住む「あるアイヌ男性」が書いたエッセイ(未発表)をいただいた。味のある内容なので、ご紹介する。
 *一般的でないアイヌ語は、後ろに(○○○)と日本語を記した。

 【カムイ達T‐チロンヌップ(キツネ)母さんとの出会い】

 「今日も暑いなァ」これが同僚との朝の挨拶である。俺は、森林組合に勤め、造林地の下刈り作業をしている者です。
 毎日、現場への行き帰りに三ヶ所のチロンヌップの巣穴を横目に通りすぎる。

 道路脇で戯れるチロンヌップのベイビー達、とても可愛い。そしてとても危険である。この奥にダムができるため、大型車両が、頻繁に通る危険な地域である。
 同僚の若い運転手に声をかける「危いよ」。

 そんな日が続いたある日の事、現場で昼食が終り、いつものように仮眠を、と思っている時、おもわぬ訪問者である。
 同僚が、「アッ、キツネだ」と言った。見ると、何回も見た事があるチロンヌップだ。

 見るからに子育て真っ最中だということがみてとれる。
 オッパイは、地面に着く程垂れ下り、子供に栄養を取られているせいか、ヤセ細り、毛がわりもできず、とてもみすぼらしい。

 車中にいる俺達をぐるぐると回り、観察し、二、三分くらいたってから草ムラに消えていった。
 
 そして翌日も同じ時刻に現れた。それが三・四日続いたので、すっかり顔見知りになった。
 同僚が暑さで食欲が無いのか突然弁当の殆んどをチロンヌップ母さんに投げ与えた。

 ガツガツとはこのことか!アッという間に胃と口にほうばり、巣穴の方へ一目散。
 余程子供達が腹をすかしているのだと想像がつく。

 この事を、家に帰って女房に話すと「気の毒に、明日、何か持っていって」と言われ、俺もその気になる。

 どこかの団体にそんな事をしたら自活できなくなると叱られそうである。しかし、あのみすぼらしい姿を見ては、放ってはおけない。

 何回かエサを持っていくうちに、チロンヌップ母さんの野生のキツネ顔が、気のせいか、「イライライケレ」と言って微笑んでいるように見えるのが不思議である。

 そんな楽しい時もすぎ、今日の仕事が終了。家路につく。
 途中、二番目の巣穴が見えてきた。暑いのかファミリーの姿が無い。

 そうして最初の(一ヶ所目の)巣穴に近づいた時、前方に、何羽かのパシュクル(カラス)が飛びかっているのが見えてきた。

 悪い予感がした。案の定、一匹が車の犠牲になっていた。どうしようもない。かわいそうに。
 そして、次の日、もう一匹もである。何という事か!

 母親が近くでボーゼンとして立っているのを見ながら、「もう道路近くで子供を産むなよ」と思いながら通りすぎた。

 明日からは現場変わりで、一ヶ月程ここを離れる。チロンヌップ母さん、そしてスマホに夢中になっている人間の母さん、子供達から目を離すな。車には用心用心。

 一ヶ月後、ファミリーがどうなっているか、楽しみやら心配やらである。
 チロンヌップ母さん、それまでバイバイ。

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 *この写真は、数年前私が撮影したものでエッセイ内容とは無関係です。

 *生原稿は、次のとおりです。
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※2015.12.30 エッセイ作者からの申出により、表題の変更、作中の一人称の変更を行いました。
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2015/11/10  18:47

投稿者:ブログ管理者
APWI 様

>「新深川市史」の記述に関する部分をお借りしました。

について、喜んで了承いたします。

2015/11/9  23:23

投稿者:APWI
「新深川市史」の記述に関する部分をお借りしました。ご了承いただけない場合は、お手数ですが、コメント欄よりお知らせ願います。

http://don-xuixote.hatenablog.com/entry/2015/11/09/231646

2015/9/18  2:08

投稿者:D. X.
お久しぶりです。
昨晩、古いブログ記事を整理していて、はてな☆が付けられているのに気づきました(その時の記憶があまりないのですが)。ということは、はてなIDをお持ちなのですね。
とにかく、どうされているのだろうと気になって本当に久しぶりに訪問してみました。こういう投稿は、可能ならもっと頻繁にして欲しいと思います。


http://don-xuixote.hatenablog.com/

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