刑務所内、広がる職業訓練
民間委託で職種も多様化

調理師試験に必要な法規について学ぶ受刑者=栃木県さくら市の喜連川社会復帰促進センター、河原田写す
刑務所で服役中に実務経験を積み、出所後は調理師に――。法務省は、民間のノウハウを生かした受刑者の職業訓練をさらに拡大する。官民協同運営の刑務所ですでに始まっているが、今後は従来型の刑務所にも広げる。出所後の社会復帰をしやすくするのが目的で、委託を受けた企業が想定する訓練内容は給食調理やネイリスト、電話オペレーターなど様々だ。
2007年に開所した官民協同運営の「喜連川(きつれがわ)社会復帰促進センター」(栃木県)。35人の炊事担当の受刑者が調理師資格を目指す。400人分を一度に作れる大型鍋や、できあがった食事を急速に低温にできる装置など最新の設備がそろった調理室で、コックの帽子をかぶった民間の指導者が、受刑者に交じって実技や国際的な衛生基準(HACCP=ハサップ)に即した衛生管理を指導する。隣の部屋では、訓練中の受刑者が「食品衛生法に基づく食品表示」の教材ビデオを見ながら、熱心にノートを取っていた。
刑務所では以前から、測量やビルメンテナンスなどの職業訓練が行われてきた。だが国が設備を導入し、刑務官らが教える訓練は「雇用ニーズに即応しにくかった」(法務省矯正局)という。
新たに民間委託の職業訓練を始めるのは、初めて服役する男性受刑者が入る静岡刑務所(収容定員1125人)や黒羽(くろばね)刑務所(同1820人、栃木県)と、女性受刑者を収容する笠松刑務所(同532人、岐阜県)。再犯防止のための教育プログラムなどについて公募する提案型入札を実施し、三井物産や小学館集英社プロダクションなど4社が参加した企業体が4月、約71億円で落札した。事業期間は来年1月から17年までの6年間。企業側には、訓練で養成した優秀な人材を出所後に雇用する意向もあるという。
だが、07〜08年につくられた官民協同運営の刑務所は、開設の時点で訓練のために必要な設備を組み込むことができたが、今回拡大する3刑務所は築19〜43年と古く、構造上の制約も多い。過剰収容だったことから受刑者の居室に替えた会議室を、再び訓練用の教室に戻すなどの改装も必要だ。また、民間の指導者と受刑者の移動区域を分けるなど、既存の施設で安全管理上の対策をどう取るのか、などが課題となっている。
法務省は、訓練を実施する企業体と協議をすすめており、今秋にも企業体から「仕様書」を提出してもらい、認可する方針だ。同省の担当者は「プロの職業訓練を受けて、出所後の社会生活を円滑にすることが、再犯防止にもつながる」と話す。(河原田慎一)
asahi.com 2010年7月26日9時20分

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