詐欺被害者に1億円還付へ 追徴保全命令 長崎
会員制クラブの退会手続き代行名目で多額の現金をだまし取ったとして、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)などの罪で起訴された東京の貴金属訪問販売会社長に対し、長崎地裁は被害者救済のため同法に基づく追徴保全命令を出した。長崎地検の請求によるもので、被害者に還付される額は計1億円近くになるという。同法の改正以来、例のない巨額救済となる見通しだ。
追徴保全命令は追徴に備え、被告に対し財産の処分を禁ずるもの。
命令を受けたのは、東京都豊島区東池袋4丁目、貴金属訪問販売会社セレクト・ワン社長の森卓也被告(35)。起訴状によると、スポーツや旅行などの会員制クラブのメンバーに「あなたは生涯契約になっているから一生会費を払わなければならない。退会手続きができるが、手数料を取れないので宝石を買ってほしい」などとうそを言って安価なダイヤモンドを買わせ、全国100人以上から約8千万円をだまし取ったとされる。
同社はグループ5社で、05年8月から07年8月の間に、静岡、宮崎、沖縄を除く全国44都道府県の約4千人と、同様の手口で計27億4千万円の契約を交わしていた。
法務省によると、組織的な詐欺や恐喝などの被害回復は、従来は主に損害賠償請求の民事裁判を起こすことで図られてきた。が、実際には暴力団などを恐れて提訴に踏み切れなかったり、資金洗浄により被害財産がどこにあるかわからなかったりで、財産を取り戻すことは難しかった。
このため、06年12月に組織犯罪処罰法を改正。刑事裁判の判決が確定した後に国が違法収益を取り上げて被害者に分配する仕組みができた。
還付できるのは法改正後に生じた被害に限られる。そこで、長崎地検は法改正後を中心に100件以上の被害について、森被告の追起訴を4回にわたって重ねてきた。
還付は刑事裁判の判決確定後に可能となる。起訴された以外の余罪分の被害者に対しても、検察官の判断で還付ができるという。
法改正に携わった渥美東洋・京都産業大教授は「これだけの額を還付できる例は聞いたことがない。組織犯罪を取り締まる仕組み作りはまだ不十分であり、こうした例を増やしていかなければならない」と話している。
アサヒ・コム >ニュース>社会>裁判記事 2008年6月22日6時5分