
言わずと知れた「フランス濃縮袋みたいなクルマ」。いかに簡潔に目的を達成出来るかという思想は、無論「椅子」にまで反映されており、構造はなんと背中部分のあて布をパイプからリング状のゴムで吊り、その上に布を被せただけという簡潔さ。
だがすごいのは、これだけの構造でありながらも長時間の運転にも問題が無いことである。現代の基準をもってすれば考えられないほど沈み込むが、ただ沈み込むだけでなくある程度沈んだ後は椅子が心地よく体にフィットする。一時期の国産高級車によく見られた「ただ柔らかい椅子」の悪印象で、「柔らかい椅子はキライ」というユーザが多いかと思われるが、その印象は覆されるはずだ。
とにかく言うならば「限りなく柔らかいウォーターベッド、もしくはハンモック」であり、どんな姿勢でも身体に負担がかかりにくいのも面白い。
欠点は「ゴムが伸びる」ことで、これによって座り心地も悪くなり沈み込みが増えすぎてしまう。だがゴムを新しいのに換えれば(ただし、ゴムの個数が多く交換は大変)もとに戻るのだから、あまり悩むことはないともいえる。
リアシートもまた、フロントに負けないほどに座り心地がよい。
これほどまでに簡潔であり、また基本設計は1940年代のこのクルマの椅子が、人間工学的に設計された現代のシートよりも良い場合が多いのであるから仏車の椅子には尊敬の念すら抱く。
(写真はリアシート)
シトロエン2CV6